今回は、JCFN主事のキサンガラ・詩織ちゃんのお誘いにより、JCFNのブログにプチ本書評を投稿させていただきました。私が面白いと思った本の印象に残った部分を紹介させて頂ければと思います。本の全体の紹介でもなく、いわゆるニッチな箇所の読書感想文ということで、本のレビューとは異なりますが、読み終わった後に「へぇ、こういう本もあるんだ」くらいに思っていただけたらいいなと思います。
今回紹介させていただくのは、”The Hidden Art of Homemaking” by Edith Schaefferです。1971年に出版され、2022年の生活に合わなかったらどうしようと最初は思ったのですが、読み進めていくと、変わらない聖書という基盤があると、時代を超えて色褪せることがない生活が可能ということと、むしろ現代社会で失ってしまったなにかを取り戻すのだと知った一冊でした。
そもそも、この本をなぜ手に取ったのか。
私は、今年の始めに、お家を居心地良い空間(英語でいうcozy)にしたい、そしてクリエイティブに生きたい、という夢を描いたものの、具体的に行動に起こさずに時間だけが過ぎていました。でも、実際は家の片付けが異常に苦手で、気がつけばダイニングテーブルは私の書類の山で埋め尽くされ、ある意味、ダイニングテーブルという「地」を「(荷物で)満たす」という、創世記1:28を捻じ曲げたような生活をしています(主人は、忍耐強いです)。神様が私を母の胎にいる前から造られた時、「家を居心地よくする」能力を入れ忘れたのだと思うことがよくあります。でも、何故かその夢を諦めることができない。ただ整理整頓ができるようになりたいわけではなく、生活全体が、キリストの香りを放つようになりたい。では、「homemaking」について、クリスチャンはどのように向き合えばいいのか。まさに、この本は私の中で、その疑問の答えの一つとして、腑に落ちたものとなりました。
本のサブタイトルでもある”Creative ideas for enriching everyday life”が物語るように、この本は、各章にテーマごとに分かれており、音楽、芸術、インテリア、ガーデニング、食事など、日常的なテーマを取り上げています。でも、まず土台として挙げられているのが、神様がどのようなお方で、その似姿として造られたわたしたちは、どのように、その神様の性質を表していくのか、ということです。創世記1章からわかるのは、神様がとてもクリエイティブな方であること。神の似姿として創られた私達は、そのクリエイティブな姿をどのように表していくのか、が問われています。そして、クリエイティブなことは、決して音楽家や芸術家に限られた世界ではなく、楽器が弾けなくても、絵が下手でも、任されている領域であるということ。
例えば、音楽は、楽器が弾けなくても、歌を歌うことはできる。逆に、楽器が弾けても舞台の上に立つことができないから、地に埋めてしまった音楽の賜物があっても、それはまず家の中で表されていく大事さを著者は語っています。音楽に限られたことではなく、絵を描くのが好きであれば、家族のためにその賜物をまず用いること。料理が好きであれば、他の人に振る舞う機会がなくても、家族に喜んでもらえる食事を作ること。現代の生活では、なにかと「プラットフォーム(発信できるSNSのアカウントなど)」がないと、なにかに取り組む意味がないのでは?と思いがちですが、実は、もっともっと隠れた場所で行われることに意味があるということに気付かされました(タイトルの「Hidden Art」の言葉も、その意味合いからつけられています)。
この本の良いところは、決して芸術家(アーティスト)でなくてもいい、という大前提に立っています。かといい、アーティストの心もくすぐられるようなヒントが盛りだくさん。そして、家族がいる人に対してだけでなく、一人暮らしに向けたコメントもたくさん入れているのが、とても嬉しかったです。一人暮らしでも、自分を大事にするという思いで、花を飾ることは、最近はよくSNSでも話されることですが、この本の中にも書かれていました。食卓の真ん中に、季節を感じるようなテーブルデコレーションを飾るというアドバイスも、お店でインテリアを買うのではなく、例えば、夏は遊びに行った海の貝殻を集めて飾ったり、流木を飾ったり(そもそも道端に流木を見つけるのは中々ないですが…)、ある意味身近な所で試せることが紹介されます。「いつか」を待たずに、ちょっとやってみようかな、と思えるようなことが散りばめられています(ハードル高めのものも入っていますが!)。
著者が、クリエイティブな生活からかけ離れた日々を過ごしている人が、徐々にクリエイティブなことをし始めることを、骨折した腕のギブスが外された時のような感覚に表わしていたのが、とても印象的でした。そのギブスが取れた時に、腕は最初はとてもぎこちない動きしかできないけど、動かしていくうちにまた感覚が戻ってくる。私達全員に与えられている、そのクリエイティブな賜物を活かして生活したら、どんなに活き活きした毎日となるだろうか。
さぁ、そのギブスを取っていこうではないか。